猛禽類を飼育していると、多くの方が最初に疑問に思うことがあります。

「この子は、ほとんど自分から水を飲まないけれど、本当に大丈夫なのだろうか?」

初めて猛禽類を飼育される方であれば、不安に感じるのも当然です。

しかし、長年さまざまな猛禽類と接してきた経験から感じるのは、自分から積極的に水を飲まないこと自体は、決して珍しいことではないということです。

むしろ、これは猛禽類が野生で生きてきた歴史を考えると、とても自然な行動だと言えます。

私たちは人間ですから、「喉が渇いたら水を飲む」という感覚で考えてしまいます。

ですが、猛禽類を理解するためには、一度その考え方を横に置いて、生き物としての本来の姿を知ることが大切です。

猛禽類にとって水は「飲むもの」ではなく「獲物に含まれているもの」

人間は水をコップやペットボトルから飲みます。

一方で、猛禽類は野生ではそのような生活をしていません。

彼らが口にする水の多くは、獲物の体内に含まれている水分です。

例えば、

・マウスの体の約70%は水分
・小鳥も約60〜70%が水分

と言われています。

つまり、獲物を食べることは、栄養を摂るだけでなく、水分を補給することでもあります。

これは猛禽類だけではなく、多くの肉食動物に共通する、とても合理的な仕組みです。

なぜ積極的に水を飲まないのでしょうか

その理由の一つは、野生での生活にあります。

猛禽類は空では優れた捕食者ですが、地面に降りると決して無敵ではありません。

地面では、

・飛び立つまでに時間がかかる
・周囲への警戒が難しくなる
・他の動物に襲われる危険性もある

このようなリスクがあります。

つまり、水を飲むために地面へ降りるという行動そのものが、野生では危険を伴うのです。

そのため、必要以上に水場へ行かなくても生きていけるような生態になったのではないかと私は考えています。

それでも、水は絶対に必要です

ここは誤解してほしくない部分です。

「あまり飲まない」と「水が必要ない」は、まったく別の話です。

水は、

・血液を循環させる
・消化を助ける
・体温を保つ
・老廃物を排出する

など、生きていくために欠かせない働きをしています。

これは人間も猛禽類も変わりません。

違うのは、水を体に取り入れる方法だけなのです。

飼育下では自然とは条件が大きく変わります

ここからが、私が最もお伝えしたい部分です。

野生では、水は獲物だけではありません。

雨に濡れたり、自然環境の中でさまざまな形で水と関わっています。

しかし飼育下では、その環境がありません。

さらに、

現在、多くの飼育下では冷凍マウスや冷凍ウズラなどを使用します。

もちろん栄養価は十分ですが、解凍時にはドリップとして水分が流れ出ます。

そのため、野生で捕らえたばかりの獲物とは、まったく同じ条件とは言えません。

雨が降らない

野生では雨に打たれることも日常です。

羽を伝って流れる水を自然に口へ入れる機会もあります。

しかし飼育下では、その機会はほとんどありません。

生活環境そのものが違う

飼育下は野生より安全ですが、その一方で自然環境も少なくなっています。

だからこそ、人が意識して補ってあげる必要があると私は考えています。

水不足は、ゆっくりと現れます

水不足だからといって、すぐに体調を崩すとは限りません。

むしろ怖いのは、

少しずつ状態が変化していくことです。

例えば、

・羽艶が少しずつ悪くなる
・羽の質が落ちる
・換羽がきれいに進みにくくなる
・回復に時間がかかる

こうした変化は一日では分かりません。

毎日見ているからこそ、気付きにくいこともあります。

だからこそ、日頃から良い状態を維持することが大切だと思っています。

私が考える「水の本質」

長年猛禽類を飼育してきて感じるのは、

猛禽類にとって水は、「飲みに行くもの」ではなく、「本来そこにあるもの」だということです。

野生では、それが当たり前に存在しています。

しかし飼育下では、その環境を人が用意しなければなりません。

それも飼育の大切な役割の一つだと考えています。

最後に

猛禽類は、自分から「水が欲しい」と訴えることはほとんどありません。

だからこそ、私たち飼育者が、その生態を理解し、本来の環境に少しでも近づけてあげることが大切なのではないでしょうか。

このシリーズは、私自身が長年の飼育の中で経験し、感じ、試行錯誤してきたことをもとにお伝えしています。

もちろん、飼育方法にはさまざまな考え方があります。

その中の一つの考え方として、皆様の猛禽類との暮らしの参考になれば幸いです。

次回予告

次回は、

「水が不足した猛禽類に実際に起きる変化」

についてお話しします。

羽毛の状態、代謝、健康状態など、日々の飼育で見えてきた変化を、実際の経験を交えながらご紹介します。

今回もハンティングアニマルのブログを最後まで読んで頂きありがとうございます。

ではまた、次回のブログでお会いしましょう。